【レビュー】ドローン工学入門


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  • 出版情報
  • ・著者:野波健蔵/著
  • ・出版日:20200826
  • ・ページ数:318P
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目次

本書は和書として最初の「ドローン工学入門」の専門書で,「モデリングと制御」に特化した学術書である。著者が大学での研究のみに留まらず,大学発ベンチャーのドローン企業を創業して,研究開発とビジネスの両方を実践してきた内容を本書にまとめているところに特徴がある。つまり,ここで述べられている「考え方」がドローンビジネスと技術のベースになっている。誤解を招かないために補足するが,本書は「考え方」を述べているのであって,このままをビジネス実機に適用しているわけではない。だから,「入門」なのであり「ビジネス実機は格段に奥が深い」ことをご理解頂きたい。
ドローン工学の構成要素は大分類すると,(1)機体システム,(2)推進システム,(3)誘導・航法・制御,(4)通信システム,(5)地上局システムの5つに分けられる。(1)は固定翼か回転翼か等,機体デザイン,構造強度,機体材料,空力抵抗等機体本体である。(2)は動力としてエンジン型,バッテリ型,そのハイブリッド型,燃料電池型等である。(3)は頭脳部で,姿勢安定化や経路追従,障害物の検知と衝突回避等である。(4)は無線周波数選定,携帯電話使用のLTE通信,5G関連である。(5)はスマホやPCを用いて経路計画,飛行時の飛行状況確認等である。それぞれにハードウエアとソフトウエアがあるが,(1),(2),(4),(5)は時代と共に進化していく分野であるのに対して,(3)のAIを活用した誘導を除く,航法・制御技術については成熟期に入り,ほぼ体系化される段階にきている。本書は,最も普遍性を有する(3)の成熟期に入った「モデリングと航法・制御技術」に特化して「ドローン工学入門」としてまとめている。
1章では,姿勢推定のアルゴリズムについて考え方を述べている。特に,クォータニオンとオイラー角の関係等を導出している。2章では,4つのモデリング法について長所と短所や,制御系設計の観点から著者の私見を交えてまとめている。特に,冗長系へのマルチコプタの制御入力の配分について明らかにしている。3章では,H2制御,LQG制御,H∞制御のポイントを平易にまとめている。4章では,スライディングモード制御系における新しい設計法を提案している。最後の5章は,シングルロータ,クワッドロータ,ヘキサロータ,2重反転ロータ,クワッドティルトウイング(QTW)ロータなど,モデリングの難易度が低い機体から高い機体までをすべて状態空間モデルとして表現して制御理論を適用し,実際に自律飛行実験とシミュレーションを比較している。これほどまでに多種多様な機体のモデリングと制御を,1冊の書籍にまとめたものは国内外を通じて見当たらない。
本書はこの観点から,ドローンのモデリングと制御をいかに実践するかを,多くの事例を紹介することでその全貌が理解できるものと確信する。本書がドローンのモデリングと制御に関心のある大学研究者,企業技術者,大学院生,学部生の読者の座右の書になることを祈念したい。そして願わくば,日本のドローン産業の発展に一石を投じることができれば,至高の喜びである。

概要

ドローンを操るソフトウェアの自律飛行制御について、第一線の著者が蓄積した技術を詳述。

レビューの一覧

 ・クウォータニオンによるジンバルロックを回避するリアプノフ関数を用いた制御[2023-10-03に投稿]

 ・ドローンに使用される姿勢推定システムをRaspberry Piで実装する[2021-12-02に投稿]


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